tomiです。
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平成25年度の申込者数 70,896名、受験者数55,434名、合格者数5,597名、合格率10.10%でした。
今日から平成25年度の問題を解説していきます。
まずは問題27(民法)です。
問題27錯誤による意思表示に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア 法律行為の要素に関する錯誤というためには、一般取引の通念にかかわりなく、当該表意者のみにとって、法律行為の主要部分につき錯誤がなければ当該意思表示をしなかったであろうということが認められれば足りる。
イ 法律行為の相手方の誤認(人違い)の錯誤については、売買においては法律行為の要素の錯誤となるが、賃貸借や委任においては法律行為の要素の錯誤とはならない。
ウ 動機の錯誤については、表意者が相手方にその動機を意思表示の内容に加えるものとして明示的に表示したときは法律行為の要素の錯誤となるが、動機が黙示的に 表示されるにとどまるときは法律行為の要素の錯誤となることはない。
エ 表意者が錯誤による意思表示の無効を主張しないときは、相手方または第三者は無効の主張をすることはできないが、第三者が表意者に対する債権を保全する必要がある場合において、表意者が意思表示の瑕疵を認めたときは、第三者たる債権者は債務者たる表意者の意思表示の錯誤による無効を主張することができる。
オ 表意者が錯誤に陥ったことについて重大な過失があったときは、表意者は、自ら意思表示の無効を主張することができない。この場合には、相手方が、表意者に重 大な過失があったことについて主張・立証しなければならない。
1 ア・イ
2 ア・ウ
3 イ・エ
4 ウ・オ
5 エ・オ
正解は5です。
ア 妥当でない
ア 法律行為の要素に関する錯誤というためには、一般取引の通念にかかわりなく、当該表意者のみにとって、法律行為の主要部分につき錯誤がなければ当該意思表示をしなかったであろうということが認められれば足りる。
要素とは「重要な事項」という意味であり、要素の錯誤とは具体的には錯誤がなければ法律行為をしなかったであろうと考えられる場合で、かつ、一般取引通念に照らして錯誤がなければ意思表示をしなかったであろう場合を指します。(大判大7.10.3)
例えば、年末に週刊マンガの合併号を購入しました。
本来なら合併号ですから翌週の発売はないはずですが、年明けにコンビニでたまたま見つけた(年末に購入済みの)合併号を買ってしまったので返品したい。
と言う場合です。
この場合は大半の人がそうだなと思いそうです。
同じように週刊マンガを購入しました。
でも読みたかったマンガが休載していたので返品したい。
これはどうでしょう。
たまたまそのマンガが休載していただけで返品はどうかという考え(一般取引通念)からして問題がありそうです。
そもそも一旦購入したマンガを一般取引通念から返本できるか。
という問題があり、解説としては不適切かもしれませんが・・・・。
イ 妥当でない
イ 法律行為の相手方の誤認(人違い)の錯誤については、(継続的な関係を残さない)売買においては法律行為の要素の錯誤となるとならないことが多いが、(個人に重点をおく)賃貸借や委任においては法律行為の要素の錯誤とはならない。となる。
売買では「代金をキチンと支払ってくれるか」は重要ですが「誰が買うか」というのはそれほど重要ではありません。
それに対して、自分の所有するマンションに「誰が住むのか」や
自分の代わりに契約をしてもらう場合に「誰がなるのか」は重要になります。
ウ 妥当でない
ウ 動機の錯誤については、表意者が相手方にその動機を意思表示の内容に加えるものとして明示的に表示したときは法律行為の要素の錯誤となるが、動機が黙示的に 表示されるにとどまるときは法律行為の要素の錯誤となることはない。
錯誤とは意思と表示の不一致なので、動機の錯誤は錯誤に含まれません。
ただし動機を相手方に表示すれば要素の錯誤となり得ます。(大判大3.12.15)
そしてこの場合の表示は明示的(意思や物事を明らかに示すこと)だけでなく黙示的(その時の状況などによって、間接的に意思表示と見なされる)でも良いとされています。(最判平元.9.14)
高速道路ができる予定がないが、高速道路ができると思い、その近くの土地の地権者に土地を売ってくださいと言った場合を考えてみると、
高速道路ができると思い「土地を買いたい」ので「土地を売って下さい」と言えば意思と表示は一致しているので錯誤になりません。
「高速道路ができるから土地を買いたい」ので「土地を売って下さい」と言えば動機(高速道路ができる)が意思表示の内容になります。
エ 妥当
エ 表意者が錯誤による意思表示の無効を主張しないときは、相手方または第三者は無効の主張をすることはできない(最判昭40.9.10)が、第三者が表意者に対する債権を保全する必要がある場合において、表意者が意思表示の瑕疵を認めたときは、第三者たる債権者は債務者たる表意者の意思表示の錯誤による無効を主張することができる。(最判昭45.3.26)
オ 妥当
オ 表意者が錯誤に陥ったことについて重大な過失があったときは、表意者は、自ら意思表示の無効を主張することができない。(民法95条)この場合には、相手方が、表意者に重 大な過失があったことについて主張・立証しなければならない。(最判大7.12.3)
以上からエとオが妥当であり5が正解です。
以上、今日はここまでです。
最後までご覧いただきましてありがとうございます。