tomiです。
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平成25年度の申込者数 70,896名、受験者数55,434名、合格者数5,597名、合格率10.10%でした。
今日は問題29(民法)です。
問題29 Aが自己所有の事務機器甲(以下、「甲」という。)をBに売却する旨の売買契約(以下、「本件売買契約」という。)が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
1 Aが甲をすでにBに引き渡しており、さらにBがこれをCに引き渡した場合であっても、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、甲につき先取特権を行使することができる。
2 Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、CがAに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、同時履行の抗弁権を行使してこれを拒むことができる。
3 本件売買契約において所有権留保特約が存在し、AがBから売買代金の支払いを受けていない場合であったとしても、それらのことは、Cが甲の所有権を承継取得することを何ら妨げるものではない。
4 Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、CがAに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、留置権を行使してこれを拒むことができる。
5 Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、Bが売買代金を支払わないことを理由にAが本件売買契約を解除(債務不履行解除)したとしても、Aは、Cからの所有権に基づく甲の引渡請求を拒むことはできない。
正解は4です。
1 妥当でない
1 (債権者=売主)Aが(事務機器)甲をすでに(債務者=買主)Bに引き渡しており、さらに(債務者=買主)Bがこれを(第三取得者)Cに引き渡した場合であっても、(債権者=売主)Aは、(債務者=買主)Bから売買代金の支払いを受けていないときは、(事務機器)甲につき先取特権を行使することができる。
2 妥当でない
2 (債権者=売主)Aが(事務機器)甲をまだ(債務者=買主)Bに引き渡していない場合において、(第三取得者)Cが(債権者=売主)Aに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、(債権者=売主)Aは、(債務者=買主)Bから売買代金の支払いを受けていないときは、同時履行の抗弁権を行使してこれを拒むことができる。
同時履行の抗弁権は双務契約の当事者間で認められます。(民法533条)
問2の場合、双務契約の当事者とは(売主)Aと(買主)Bになり、(売主)Aと(第三取得者)Cに契約関係がないため、(売主)Aは同時履行の抗弁権を行使して拒むことはできません。
3 妥当でない
3 本件売買契約において所有権留保特約が存在し、(債権者=売主)Aが(債務者=買主)Bから売買代金の支払いを受けていない場合であったとしても、それらのことは、(第三取得者)Cが甲の所有権を承継取得することを何ら妨げるものではない。
所有権留保特約とは、代金を完済するまでは目的物の所有権を売主に留保する特約のことです。
所有権留保特約がついている売買契約の売主は、留保している所有権を第三取得者に対して主張できます。(最判昭50.2.28)
4 妥当
4 (債権者=売主)Aが(事務機器)甲をまだ(債務者=買主)Bに引き渡していない場合において、(第三取得者)Cが(債権者=売主)Aに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、(債権者=売主)Aは、(債務者=買主)Bから売買代金の支払いを受けていないときは、留置権を行使してこれを拒むことができる。
留置権は物権(法定担保物権)なので第三者に対しても主張できます。
5 妥当でない
5 (債権者=売主)Aが(事務機器)甲をまだ(債務者=買主)Bに引き渡していない場合において、(債務者=買主)Bが売買代金を支払わないことを理由に(債権者=売主)Aが本件売買契約を解除(債務不履行解除)したとしても、(債権者=売主)Aは、(第三取得者)Cからの所有権に基づく(事務機器)甲の引渡請求を拒むことはできない。
当事者の一方が解除権を行使した時は、各当事者はその相手方を現状に復させる義務を負いますが、第三者の権利を害することはできません。(民法545条1項)
ただし、第三者として保護されるには対抗要件(動産の場合は引き渡し(民法178条) )を備えて置く必要があります。(最判昭和33.6.14)
以上、今日はここまでです。
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