tomiです。
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平成24年行政書士試験は、受験申込者数75 ,817名、受験者数59,948名、合格者数5,508名、合格率9.19%でした。
今日は問題29(民法)です。
問題29 甲土地を所有するA は、甲土地に隣接するB所有の乙土地を通行している。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
1 甲土地が乙土地に囲まれて公道に通じていない場合、A がB に対して囲饒地通行権* を主張するためには、Aは甲土地の所有権の登記を具備していなければならない。
2 甲土地と乙土地は元々一筆の土地であったが、分筆によって他の土地に囲まれて公道に通じていない甲土地が生じ、これによりAが乙土地に対する無償の囲饒地通行権を有するに至った場合において、その後に乙土地がCに売却されたとしても、Aは当然にCに対してこの通行権を主張することができる。
3 AがBとの間の賃貸借契約に基づいて乙土地を通行している場合において、その後に甲土地がCに売却されたときは、これによりCも当然に乙土地を通行することができる。
4 Aは、少なくとも20年にわたって、自己のためにする意思をもって、平穏、かつ、公然と乙土地の一部を通行していれば、A自らが通路を開設していなくても、乙土地上に通行地役権を時効取得することができる。
5 Aが地役権に基づいて乙土地の一部を継続的に通路として使用している場合において、その後にCが通路の存在を認識しながら、または認識可能であるにもかかわらず認識しないでBから乙土地を承継取得したときは、C は背信的悪意者にあたるので、Aの地役権設定登記がなされていなくても 、AはCに対して通行地役権を主張することができる。
新規追加(注) * 囲饒地通行権とは、民法 210 条1 項に規定されている「他の土地に囲まれて公道に通じていない土地」の通行権のことをいう。
正解は2です。
1 甲土地が乙土地に囲まれて公道に通じていない場合、A がB に対して囲饒地通行権* を主張するためには、Aは甲土地の所有権の登記を具備していなければならない。
具備は「ぐび」と読みます。
完全に備えていると言う意味です。
2 妥当
2 甲土地と乙土地は元々一筆の土地であったが、分筆によって他の土地に囲まれて公道に通じていない甲土地が生じ、これによりAが乙土地に対する無償の囲饒地通行権を有するに至った場合において、その後に乙土地がCに売却されたとしても、Aは当然にCに対してこの通行権を主張することができる。
判例(最判平2.11.20)により妥当です。
3 妥当でない
3 AがBとの間の賃貸借契約に基づいて乙土地を通行している場合において、その後に甲土地がCに売却されたときは、これによりCも当然に乙土地を通行することができる。
民法612条1項によれば、賃借人は賃貸人の承諾がなければ賃借権を譲り渡したり、借りたものをさらに他人に貸したりする事はできません。
問題では承諾があったのかどうかが不明のため、当然に通行する事ができるというのが妥当ではありません。
借りたものをさらに他人に貸すことを「転貸」と言います。
4 妥当でない
4 Aは、少なくとも20年にわたって、自己のためにする意思をもって、平穏、かつ、公然と乙土地の一部を通行していれば、A自らが通路を開設していなくても、乙土地上に通行地役権を時効取得することができる。
民法283条によれば、地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができるとなっています。
この継続的に行使とは判例(最判昭和30年12月26日)によれば、承役地上に通路が開設されること、しかも、その開設は要役地所有者によってなされることが必要であるとされていますので土地や建物を借りているだけでは、地役権の時効取得は認められないことになります。
5 妥当でない
5 Aが地役権に基づいて乙土地の一部を継続的に通路として使用している場合において、その後にCが通路の存在を認識しながら、または認識可能であるにもかかわらず認識しないでBから乙土地を承継取得したときは、Cは背信的悪意者にあたるので、Aの地役権設定登記がなされていなくても 、AはCに対して通行地役権を主張することができる。
判例(最判平成10年2月13日)により妥当ではありません。
以上、今日はここまでです。
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