tomiです。
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平成24年行政書士試験は、受験申込者数75 ,817名、受験者数59,948名、合格者数5,508名、合格率9.19%でした。
今日は問題34(民法)です。
問題34 不法行為に基づく損害賠償に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア Aの運転する自動車がAの前方不注意によりBの運転する自動車と衝突して、Bの自動車の助手席に乗っていたBの妻Cを負傷させ損害を生じさせた。CがAに対して損害賠償請求をする場合には、原則としてBの過失も考慮される。
イ Aの運転する自動車と、Bの運転する自動車が、それぞれの運転ミスにより衝突し、歩行中のCを巻き込んで負傷させ損害を生じさせた。CがBに対して損害賠償債務の一部を免除しても、原則としてAの損害賠償債務に影響はない。
ウ A 社の従業員Bが、A社所有の配達用トラックを運転中、運転操作を誤って歩行中のC をはねて負傷させ損害を生じさせた。A社がCに対して損害の全額を賠償した場合、A社は、 Bに対し、事情のいかんにかかわらずCに賠償した全額を求償することができる。
工 Aの運転する自動車が、見通しが悪く遮断機のない踏切を通過中にB鉄道会社の運行する列車と接触し、Aが負傷して損害が生じた。この場合、線路は土地工作物にはあたらないから、Aが B鉄道会社に対して土地工作物責任に基づく損害賠償を請求することはできない。
オ Aの運転する自動車がAの前方不注意によりBの運転する自動車に追突してBを負傷させ損害を生じさせた。 BのAに対する損害賠償請求権は、Bの負傷の程度にかかわりなく、また、症状について現実に認識できなくても、事故により直ちに発生し、3 年で消滅時効にかかる。
1 ア・イ
2 ア・エ
3 イ・オ
4 ウ・エ
5 ウ・オ
正解は1です。
ア 妥当
ア (加害者)Aの運転する自動車が(加害者)Aの前方不注意により(被害者)Bの運転する自動車と衝突して、(被害者)Bの自動車の助手席に乗っていた(被害者)Bの妻Cを負傷させ損害を生じさせた。(Bの妻)Cが(加害者)Aに対して損害賠償請求をする場合には、原則として(被害者)Bの過失も考慮される。
被害者側の過失については被害者と身分上ないし生活関係上一体をなすとみられる関係にある者についても考慮されます。(最判昭51.3.25)
判例では夫婦の婚姻関係が既に破綻にひんしているなど特段の事情がない限り夫の過失を被害者側の過失として斟酌することができるものとされています。
斟酌しなければならない。ではなく、斟酌することができる。
この違いに注意しましょう。
イ 妥当
イ Aの運転する自動車と、Bの運転する自動車が、それぞれの運転ミスにより衝突し、歩行中のCを巻き込んで負傷させ損害を生じさせた。CがBに対して損害賠償債務の一部を免除しても、原則としてAの損害賠償債務に影響はない。
運転ミスによりCを負傷させたということでAとBは共同不法行為者になります。(民法719条1項)
共同不法行為者は各自が連帯してその損害を賠償する責任がありますが、この場合の連帯債務は不真正連帯債務として他者に影響を及ぼしません。(最判昭57.3.4)
不真正連帯債務は、請求・更改・相殺・免除・混同・時効の連帯債務者間の絶対効が生じません。
ウ 妥当でない
ウ A社の従業員Bが、A社所有の配達用トラックを運転中、運転操作を誤って歩行中の(被害者)Cをはねて負傷させ損害を生じさせた。A社が(被害者)Cに対して損害の全額を賠償した場合、A社は、 (従業員)Bに対し、事情のいかんにかかわらず(被害者)Cに賠償した全額を求償することができる。
A社は信義則上相当とみとめられる限度においてのみ、従業員Bに対して求償できます。(最判昭51.7.8)
エ 妥当でない
エ Aの運転する自動車が、見通しが悪く遮断機のない踏切を通過中にB鉄道会社の運行する列車と接触し、Aが負傷して損害が生じた。この場合、線路は土地工作物にはあたらないから、Aが B鉄道会社に対して土地工作物責任に基づく損害賠償を請求することはできない。
土地の工作物たる踏切道の軌道施設(線路)は、保安設備(遮断機)とあわせ一体としてこれを考察すべきであり、本来そなえるべき保安設備(遮断機)を欠く場合には、土地の工作物たる軌道施設(線路)の設置にかしがあるものとして、損害を賠償する責任(民法717条1項)を負います。(最判昭46.4.23)
この賠償責任は、所有者に免責事由がなく無過失責任が定められています。
オ 妥当でない
オ (加害者)Aの運転する自動車が(加害者)Aの前方不注意により(被害者)Bの運転する自動車に追突して(被害者)Bを負傷させ損害を生じさせた。 (被害者)Bの(加害者)Aに対する損害賠償請求権は、(被害者)Bの負傷の程度にかかわりなく、また、症状について現実に認識できなくても、事故により直ちに発生し、3 年で消滅時効にかかる。
不法行為による損害賠償請求権は損害及び加害者を知った時から3年間行使しなければ時効により消滅します。(民法724条)
ここでいう「知った時」は、損害の発生を現実に認識した時になります。(最判平14.1.29)
問題では「事故により直ちに発生」となっており妥当ではありません。
負傷の程度や症状の認識は時効には関係ないので注意しましょう。
時効は損害及び加害者を知った時から3年間、不法行為から20年間で消滅します。
なお、2020年の民法改正で時効制度は大幅に改正されますので注意が必要です。
以上からアとイが妥当なので1が正解になります。
以上、今日はここまでです。
最後までご覧いただきましてありがとうございます。